■マコの傷跡■

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chapter 12



~ chapter 12 “家のこと” ~




家には温度がある、と思う。
その家に住む人達によって家の空気や温度は変わる。

私が小学校6年から暮らし始めた新築の家は広くてキレイだった。
階段は暖色系の絨毯が張られ、居間にかかるシャンデリアからは
落ち着くはずの少し黄色がかった光が反射する。
それでも家の中はいつも寒かった。
黄色がかった電気は暗いだけだった。
暖房をいくらいれて部屋が暖まっていても
どこかすきま風が吹いていく気にさせられる。そんな家だった。


出て行った母は男と一緒にアパートで暮らしていた。
何も荷物を持って出なかった母の新しい住まいには
小さなテーブルが1つと14インチのテレビが1つ。
布団がひと組あるだけだった。
台所にも鍋やフライパン等の簡単な調理器具が数個置いてあるだけ。
他には何もなくガランとしている印象。
それでも、そのアパートはなんだか暖かい空気が流れていた。
私には居心地の悪い暖かさだったけれど。

遊びに行った私に母がてんぷらを揚げてくれたのが変に印象に残っている。
カラリと揚がり、サクサク感がしっかり出ているてんぷらを食べて
この人はこんなに美味しく料理を作れる人だったのかと驚いた。
料理は愛情ってほんとだな、と思った。

私の住む家は母が出て行き、父はローンを返済する為に夜中まで働いた。
兄は会社の寮に入ったのでもういない。
私は明るく笑っていた。1人で広い家の温度を上げようと必死だった。


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